2013年12月17日火曜日

池上永一『シャングリ・ラ 下』読了

上下合わせると1000ページ弱の長編だが、読み進めている間は長さを感じさせない(1日100ページを目安に読んでいた)。
巻末に筒井康隆氏が解説で書いているように、何かにつけて過剰な(行きすぎた)作品である。小夜子が電子ケーブルを自身の神経につなぐ場面(終盤の國子も)や、しぶとい小夜子や涼子、どの人物にも見られる性的倒錯等、ぶっ飛んでいると思うことが多々あった。しかし、過剰な描写によって、登場人物達の存在が立っていたり、著者が綿密に考えただろう炭素経済の仕組みが生かされていたかのように感じる。ふと著者が得意とする呪術的・オカルト的な描写の源流は、行き過ぎに求められるのではないだろうか。
本作の前の作品『レキオス』は沖縄を舞台とした作品とのことだが、あらすじを見ていると『シャングリ・ラ』の要素が垣間見える。

本作を読了したら、『テンペスト』は『シャングリ・ラ』の後に書かれた作品だったことを知った。著者の世界観の試行的作品だったのだろうか。広く知られ(NHKのドラマ版で著者の作品を知った)、著者の世界観が洗練された『テンペスト』、本作の前の『レキオス』を読みたい。